fhána × 佐藤純之介 × M-AUDIOマイク3モデル試聴会

M-AUDIOマイク3モデル試聴会

2014年4月某日、ランティス内アイウィル所属プロデューサ・佐藤純之介氏ご協力の下、ボーカルとギターを素材に、M-AUDIOマイク3モデル「NOVA」「SPUTNIK」「PULSAR II」の試聴会を行いました。

ボーカルは、現在放送中の「僕らはみんな河合荘」OPテーマ『いつかの、いくつかのきみとのせかい』で活躍中のアーティスト「fhána」のボーカルtowanaさんによる、SPUTNIKとNeumann M149、およびNOVAとNeumann U87での歌録りで比較。

ギターは、同じく「fhána」のyuxuki waga氏の演奏を、PULSAR IIとAKG C451で録り比べ&聴き比べしました。

SPUTNIK
■「サビの抜け感とかはね、SPUTNIKがよかったな、と」
M-AUDIOマイク3モデル試聴会試聴会一番手はM-AUDIO SPUTNIK

佐藤純之介氏(以下、純之介):NEUMANN M149はレコーディングの本番でも使用したマイクでして、今、ヘッドアンプ「NEVE 1073」とコンプレッサ「Universal Audio 1176AE」という『いつかの、いくつかのきみとのせかい』のレコーディングの時とまったく同じセッティングを再現しています。

fhánaはやっぱり、歌あってのfhánaなので、いつもマイクにはこだわっているんですよ。毎回3〜4本試しつつ、なんだかんだM149に戻ってくる、ということが多いです。とはいえジャンルや音圧で、毎回必ずM149になるというわけではないんですけど、例えば勢いががある曲とかだったらSONY C-800G、あとはケーブルとか色々なものが加わって音を決めている感じですね。

>まずはSPUTNIKとNeumann M149を比較、試聴した感じはいかがでしたか?

M-AUDIOマイク3モデル試聴会佐藤純一(fhána)

佐藤純一氏(以下、佐藤):遠回しな表現ですけど、次回のレコーディングはM149ではなくて、他のマイクでもいいかなという気持ちになりました。SPUTNIKのほうが最初から高域がダイレクトに出ていて。サビの抜け感とかはね、SPUTNIKがよかったな、と。M149のほうが、中域がふくよかに録れていて、towanaの声はわりと細いのでそこを補完してくれると思って使っていたんですよ。だけど、SPUTNIKの高域の抜け具合は、ミックス時にあまりEQをせずにナチュラルな状態で使用できて良いなと思いました。

純之介:解像度的なもので言うと、10倍の値段差があるので比べようがないのですが、高域の抜け感とかスピード感が、実はM149より良い感じがしますよね。結局、M149で録った後にもハイを上げて調整しているので。SPUTNIKは完成系の音がしますよね。

>確かに、録りの段階で丁度いい音が出てくれているように感じます。後処理の手間も楽ですね。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会M-AUDIO SPUTNIK専用電源ユニットには
純之介氏こだわりのORBケーブルを使用

純之介:バンドサウンドだと、より抜けていい結果が出そうな音だね。ロックとか、ジャンルによっては録りやすいのかなという感じがします。宅録でも、加工しなくても高音の抜ける感じが出ているので使いやすいと思いますよ。

佐藤:更に、ハイ上がりなマイクは音が細い場合がありますが、SPUTNIKは細さはないというか、ちゃんと芯があって、M149とほぼ同じ大きさでちゃんと太さがあって、レンジがありますね。もちろんM149の方が密度があるんですけど、密度があって太いことによって、滑らか過ぎて逆にのっぺり聴こえる所もあるかもしれないですね。なんかもう、すべてが音で埋まってる、みたいな。

>SPUTNIKは、低価格帯モデルだからというわけじゃないですが、M149に比べていい意味でF特(周波数特性)が荒く、そこがいい結果に出ればライブ感があって録りやすのかなと感じます。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会NEUMANN M149

kevin mitsunaga氏(以下、kevin):M149の方がリッチな音がしますね。反対に、音の生々しさというか、表情が伝わってくるのはSPUTNIKかなと

純之介:エンジニアの視点からいうとですね、SPUTNIKはヘッドアンプの色を付けやすいという点もあります。今の録音はコンプの設定はまったく同じにしたんですけど、実際、M149はすごくゲインが強い、出力が大きいマイクなんです。歌とかにはちょうどいいバランスなんですけど、要はデカい音、爆音系のもの…例えばディストーションのかかったエレキギターとか、トランペットとか、サックスとか。強いリード音はM149だとテイクによっては歪んじゃうんですよ。NEVEで最小限にしてもレベルが超えちゃうので。対してSPUTNIKはゲインが小さい。ゲインが低い分、他で持ち上げることもできるし、そういう大きい音の楽器がほどよく録れる。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会佐藤純之介(アイウィル)

あとNEVE 1073の場合なんですけど、実はゲインを上げれば上げるほどNEVEのシルキーと呼ばれているサウンドがどんどん足されていくわけですよ。M149の場合だと、あまり上げすぎると歪んじゃうんで全然足せないんです。結果、SPUTNIKのサウンドとNEVEのサウンドが足された感じが、クリアな、臨場感のあるサウンドになったのかなと思いますね

一同:なるほど〜。

NOVA
■「この価格なら、最初の1本で持っておいたら、かなり使えますよね。戦えますよ」
M-AUDIOマイク3モデル試聴会towana(fhána)

>続いてNOVAとNeumann U87ですが、試聴した感じはいかがでしたか?

佐藤:NOVAは、towanaの声と非常に相性がいいですね。曲に合ってる。SPUTNIKより柔らかい印象だけど、音色がはっきりしてて聴きやすいです。輪郭がはっきり感じます。先に試した2本(SPUTNIK、M149)のいいとこどりな感じがしますね。高域も綺麗に聞こえるし、中域もふくよかだし、バランスがいいですね

>これ、実は13,000円前後で販売しているんですよ。

佐藤:安っ!安いですね〜。衝撃の価格ですよ。この価格差考えると、びっくりですね。相当コスパいいじゃないですか。サビの抜け感と明るい感じが、アニソンっぽい音に合ってます。チューブばっかりで録っていましたが、チューブじゃないトランスレスのコンデンサ・マイクもいいですね。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会Neumann U87

純之介:今スタジオにあるようなC-800GやTELEFUNKENのマイク等と比べると密度の濃さ、滑らかさは当然落ちるんですが、これを引いたとしても、抜けのよさと臨場感、ハイの抜けがすごくいいですね

U87とかM149とかって50〜60年代に開発されたビンテージ・シミュレーションのマイクなので、確かに伝統の音ではあるんですよね。対してNOVAは音作り的にも比較的新しいマイク。新しいマイクの方が、高域を出すのが上手いのかな。

ちなみに、U87は30万弱。値段的にも、20〜30倍違いますよね。この値段だったらステレオで買えちゃいますね!(笑)

毎回これがベストということはないかもしれないですが、これが一番いいという曲がありますよ。towanaさんとの相性というのもあるでしょうし、レコーディングで、選択肢に入るマイクですね。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会kevin mitsunaga(fhána)

kevin:これ、この価格なら、最初の1本で持っておいたら、かなり使えますよね。戦えますよ。クオリティの差よりは好みの差でもあります。何よりtowanaの声質に合っていますね。

yuxuki waga氏(以下、yuxuki):初心者が買う1本目のマイクには最高ですよ。丁度自宅で使っているマイク壊れたからNOVAに買い換えよう。

歌録り4種のマイクくらべ
■「レコーディングの時にブラインドテストがあったら、きっとNOVAが選ばれてましたよ」

>では、改めてこれまでの4モデルを聴き比べてみましょう。

一同:あ、やっぱりNOVAいいですね。使いやすい音。

>M-AUDIOのマイク3種は復刻なんですが、当時もやはりダントツNOVAが人気でした。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会M-AUDIO NOVA

佐藤:それは納得ですね。Neumannはどちらのモデルもリッチな音なんですけど、それが故にフラットすぎて表情がとらえにくい印象がある。対して、NOVAはキャラクタがあるっていうか、特化されたキャラクタを持っていて。女性ボーカルには正にいいと思いますね。色気があるし、暴れてくれる。その面を利用できるという点で、扱いやすいですね。

純之介:扱いやすさ、という点では、M-AUDIOは、自宅やプリプロ、自主制作などで使いやすいのではないでしょうか。Neumannは、ヘッドアンプとの組み合わせとかコンプレッサとの組み合わせなどで無限の可能性がある、いわゆる「スタジオ用途」であるので、いかに解像度か高いか、フラットかというものを追求して作られています。ハイスペックな作りで、当然価格も30万、60万になってきます。純粋に、並べて音だけで、耳で聴いて判断したら、その値段を差し引いても、30倍の性能の差はないですよね。レコーディングの時にブラインドテストがあったら、きっとNOVAが選ばれてましたよ

PULSAR II
■「きらびやかで、抜けがいい、高域が明るい音」

>最後は、yuxuki waga氏によるアコギを素材に、PULSAR IIとAKG C451とで比べてみましょう。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会yuxuki waga(fhána)とM-AUDIO PULSAR II

yuxuki:張り替えて時間の経っている弦なのに、こんなにきらびやかに聴こえるなんて。明るいマイクですね。弾いてても気持ちよかったです。やっぱりAKG C451の方が音がリッチですが、家だったらむしろPULSAR IIがいいかも。手軽にデモとか録るときに弦の状態を気にせずできそうです。

純之介:中低域はAKG C451のほうがいいですね。対してPULSAR IIはハイの感じが綺麗で、リバーブの乗りがいいです。他のマイクもそうでしたが、値段の違いというよりは、キャラクタの違いですかね。M-AUDIOは高域が綺麗でAKGは低域が綺麗みたいな感じで。確実に選択肢のひとつに入りますね。あとは、アームが付属しているのがありがたいですね。実はなかなか見つからないんですよ。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会AKG C451、アームはPULSAR II付属品

佐藤:PULSAR IIも明るい音がしますね。全体的に抜けがいいのがM-AUDIOのキャラなんでしょうね。

純之介:テンポが速い曲やリズミカルな曲は、抜けがよくてスピード感がある分PULSARIIがいいかもね。

kevin:J-POPぽいアレンジだと、カッティングを目立たせるためにEQでローを削ったりするので、PULSAR IIなら色付け感を出さずに、ナチュラルに明るい音色を表現することができますね。

総評・コメント
■ 佐藤純一氏

M-AUDIOのマイクはどれも全体的に広域が綺麗でした。確立されたキャラクタが既にあって、加工することなく使えますね。加工が省略できる部分からも、宅録向きだと思います。価格帯的に初心者が買うのにはうってつけだし、プロのミュージシャンが選択肢に入れても問題ないですね。高い機材だとフラットな音で、他の機材の影響で色付けをする過程が必要ですが、M-AUDIOのマイクは良いキャラクタを持っているので、正に「その音が欲しい」という場合にぴったり合うというメリットがあります。特に今回はtowanaにNOVAが一番合っていて良かったです。

■ yuxuki waga氏

NOVA、是非欲しいですね!4本聴き比べたときに、一番存在感がある感じがしました。最初からEQとコンプをかけたような音で録れる感じがして、まとまってて、使いやすい。アニソンぽいボーカルに合いそうな気がしました。調整段階で楽できるし、無理して作らず、自然に声が前に出せるのはいいと思います。PULSAR IIは実際に演奏して録音してみて、高域が出ているのでモニタしやすくて家で録るときにいいなと思いました。

■ kevin mitsunaga氏

驚くべきは価格だなぁと思いましたね。値段差考えたら、飛びついちゃう人多いと思いますし、最初から買ってたら、結構長い期間戦えると思うんですよ。もちろん音のキャラクタがあるので、曲を作っていくにつれて、他のマイクの選択肢も出てくると思うんですが、最初に持ってたら安心感があるというか。変に頑張って中級機種の、10万円代の少し高いマイクを買わなくていいんじゃないかなと思います。今、ソフトウエアもプラグインも低価格帯製品が多く、若い人が音楽を始める環境が整っている中で、この質感のコンデンサ・マイクが13,000円前後だったら飛びつきますね。

■ towanaさん
SPUTNIKもNOVAも、いつも使っているマイクと違うものですが、違和感がなく、さらに高音が抜けるので自分で歌っていて楽しいです。高い音がキラっと入ってくる感じが、テンションが上がるし、気持ちいいし、精神的にもいいんじゃないかなと(笑)。歌ってるときのテンションがあがったり、気持ちが乗りやすかったりそういう面も含めて、ボーカルにとってマイクというのは何より大事だと思いますね。

■ 佐藤純之介氏

高価格帯のマイクの音がフラットで解像度が高いのは当たり前で、プロスタジオで使われるべき「当たり前」のマイクが揃っているスタジオにはない、個性のあるマイクで新鮮でした。定番マイクを主に使用するプロの環境の中でも、音を聴いて「使えるな」と純粋に思わせるマイクでしたね。それで、値段が何十倍も違うじゃないですか。まさに宅録に使えるマイクです。これで宅録の水準も上がりますよね。towanaの声が、チューブじゃない方があっているかもと思いました。明瞭さ、暖かさを狙って、更にチューブ系が合うっていう先入観もあった上でM149というベストのマイクを選んでいたんですがチューブなしのトランスレスの方が高域が伸びるので、そこを考慮するとチューブにこだわらなくてもいいのかなと。次のレコーディングに関わる発見ができました。楽しかったです。

M-AUDIOマイク3モデル試聴会

>皆様ご協力いただき有難うございました。

プロフィール
■ fhána(ファナ)
M-AUDIOマイク3モデル試聴会

佐藤純一(サトウ ジュンイチ)、yuxuki waga(ユウキ ワガ)、kevin mitsunaga(ケビン ミツナガ)という男性3名のサウンド・プロデューサと、紅一点の女性ボーカリスト・towana(トワナ)による4人組ユニット。

"FLEET"としてYouTubeやMySpace時代到来前よりインターネットを拠点に楽曲を発表、メジャーからも音源をリリースしてきた佐藤純一、クリエイティブサークル"s10rw"を立ち上げ、ニコニコ動画ではVOCALOIDをメインボーカルに据えて楽曲を発表しているyuxuki waga、そしてネットレーベルシーンから登場したエレクトロニカユニット"Leggysalad"のkevin mitsunagaの3人によって、サウンド・プロデューサ集団として2011年に結成。

3人の共通項は「ビジュアルノベル」「アニメ」「インターネット」。

2012年秋には、自主制作アルバム『New World Line』でのレコーディングや、ライブ等でゲスト・ボーカルとして参加していたtowanaが正式メンバとして加入し、4人体制へ。

2013年8月にシングル『ケセラセラ』でメジャー・デビュー。同曲は、7月より放送開始したTVアニメ「有頂天家族」(原作:森見登美彦、アニメーション制作:P.A.WORKS)のEDテーマ曲のタイアップとなっている。

続いて、10月より放送開始したTVアニメ「ぎんぎつね」(原作:落合さより、アニメーション制作:ディオメディア)ではOPテーマのアーティストとして抜擢され、2ndシングルとして『tiny lamp』をリリース。

更に、2014年1月放送のTVアニメ「ウィッチクラフトワークス」(原作:水薙竜、アニメーション制作:J.C.STAFF)のOPテーマ『divine intervention』、4月放送のTVアニメ「僕らはみんな河合荘」(原作:宮原るり、アニメーション制作:ブレインズ・ベース)のOPテーマ『いつかの、いくつかのきみとのせかい』と、新人アーティストでは異例とも言える4クール連続でのタイアップを果たす。

また、ユニットとして自身の音源を発表するほか、ChouCho「looping star」(アルバム『Flyleaf』収録曲)や「life is blue back」(シングル『DreamRiser』収録曲)、相沢舞「その刹那」(アルバム『moi』収録曲)のサウンドプロデュースを担当。また、さよならポニーテール「魔法のメロディ」(シングル『空も飛べるはず/ビアンカ/恋するスポーツ』収録曲)、DECO*27 feat. 初音ミク「二息歩行」(シングル『ゆめゆめ』収録曲)、TVアニメ「ROBOTICS;NOTES」劇伴といったリミックスをそれぞれ担当するほか、ライブも関東を中心に積極的に行っている。

彼らの音楽/作品性は、iTunes Storeが“今年ブレイクが期待できる新人アーティスト”を選出する特別企画「NEW ARTIST 2014」にも選出されるなど、シーンを問わず各界から注目を集めており、今もっとも勢いのあるアーティストとなっている。

■ 佐藤純之介

アニメやゲーム関連の音楽を中心に展開しているレコード会社、ランティスの音楽制作部、株式会社アイウィルに在籍。プロデューサ、ディレクタ、エンジニアとして活躍中。

■ fhána 4thシングル「いつかの、いくつかのきみとのせかい」
M-AUDIOマイク3モデル試聴会

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  • 品番:LACM-14228
  • 税抜価格:1,365円
  • 発売元:株式会社ランティス
  • 販売元:バンダイビジュアル株式会社

<収録曲>

  1. いつかの、いくつかのきみとのせかい
    作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhana
  2. ARE YOU SLEEPING?
    作詞:林英樹 作曲:kevin mitsunaga 編曲:fhana
  3. いつかの、いくつかのきみとのせかい(Galileo Galilei “dog bass” Remix)
    作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:Galileo Galilei
  4. いつかの、いくつかのきみとのせかい – Instrumental -
  5. ARE YOU SLEEPING? – Instrumental –

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